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実は間違い、インフルエンザの伝染経路

オンライン版ニューヨークタイムズの2月3日の記事を翻訳しました。インフルエンザなどの病気の感染経路について、ソーシャルネットワークが果たす役割についての報告です。ソーシャルネットワークと言っても最近はやりのFacebookなどのSNSではなく、現実世界での交友関係のことですが。

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実は間違い、インフルエンザの感染経路
By NICHOLAS BAKALAR Published: February 3, 2011 / The New York Times

あなたやあなたのお子さんが、2009年に大流行したH1N1インフルエンザ、またの名を豚インフルエンザにやられたのなら、その感染経路はあなたが考えているのとは違っているかも知れない。

ペンシルバニア州のある学校での2009年の流行について行われた新たな研究の結果、子供たちが感染したのは近くの席のクラスメートからではなかった可能性が高く、大人が感染したのは自分の子供からでもなさそうだということが明らかになった。

研究によって明らかになったのは、インフルエンザが流行し始めてからの休校措置には、感染の速度を遅らせる効果はほとんどないということ。そして、病気が広まるもっとも一般的な経路は、子供たちの交友関係だという点だ。

研究者たちは、ある片田舎の小学校におけるH1N1の大発生を調査することで、このことを突き止めた。彼らは、実際に集団感染が進行して行く中で、リアルタイムでデータを収集したのだ。

正確に誰がいつ病気にかかったかという情報と、座席順、行事や交友関係のデータを元に、一人の犠牲者からその次へと感染してゆく経路を統計技術を使って追跡することができた。このレポートは、米国科学アカデミー紀要のウェブサイトで見ることができる。

科学者達は、295戸の家庭の370人の生徒のデータを収集した。このうち35パーセント近い生徒と15パーセント以上の家庭においてインフルエンザの感染者が発生した。もっとも詳細な情報を収集したのは、流行がもっとも顕著だった4年生の生徒だ。

感染率に対して非常に大きな影響があったのは、クラスおよび学年の構成だ。別の学年の生徒間での感染に比べ、クラスメート間のそれは25倍という値になった。しかしながら、病気の生徒と席を並べて座っていても、そのことがインフルエンザにかかる確率には影響がなかった。

交友関係が、座席順に比べてより重要な伝染手段だったのだ。生徒達は、異性よりも同性と遊ぶことの方が4倍多いのだが、この傾向に従えば、男の子は男の子からインフルエンザをうつされる確率が高く、女の子は女の子からという確率が高い。

日々の病気の進行がこの交友との関係性を示していた:5月7日から9日まではほとんど男の子達の間で病気が広まり、5月10日から13日の間は女の子達の間で広まっていたのだ。

「我々の交友関係が病気を広めるのです」、報告書の代表執筆者のサイモン・コーチミーズは語った。「また、交友関係が果たす役割は数字で表すことができます。」

6歳から12歳までの子供のうち、38パーセントが感染した。これに対し、11歳から18歳まででは23パーセント、18歳以上では13パーセントの感染率だった。大人は子供に比べ、感染しやすさは半分ぐらいだが、病気になってしまえばウィルスを他者に感染させる確率は同程度だ。

この学校は14日から18日までの間休校となったが、そのことが感染速度を遅くしたということを示すものは何もみられなかった。対応が遅すぎた可能性はある。というのも、5月14日は集団発生から18日目であり、27パーセントの生徒がすでに症状を示していたのだから。科学者達は、休校中の期間と集団発生のその他の期間とで、感染速度には違いが見られないことを明らかにした。レポートではこのことから、過去の研究が示している感染対策として集団発生の非常に早い段階で休校措置を取る必要がある、ということの正当性を示している。

自分の子供から病気をうつされた大人は5人に1人しかいなかった。このことは、休校についてよくある主張のひとつ、つまり休校すれば子供が学校から家庭に病気を持ち帰るのを防げるという主張には反する。

「分かったのは、感染した大人のほとんどは、家庭内で子供から感染したのではなかったということです」、ロンドン帝国大学の主任研究官であるコーチミーズ博士は語る。「この情報は、休校措置をとるのか、それともクラスや学年単位で学級閉鎖とするべきなのかを判断する助けになるかもしれません。」

研究成果を高く評価している専門家もいる。「なかなかの進歩だと思います。」シアトルにあるフレッド・ハチンソン癌研究センターで統計生物学について教鞭を執るアイラ・M・ロンギーニ・ジュニアは言った。「重要なデータセットを美しく分析しています。ウィルスが早く広まるのは学校に通う年頃の子供たちの間なのだから、これは重要な研究テーマです。」

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ソース: The New York Times - Close Look at a Flu Outbreak Upends Some Common Wisdom By NICHOLAS BAKALAR Published: February 3, 2011 (http://www.nytimes.com/2011/02/08/health/research/08flu.html)