翻訳蒟蒻

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愛はお金じゃ買えない:うまくいくアプリといかないアプリ

GigaOMに3月25日に掲載された記事を訳しました。

Lalaの創業者Bill Nguyenが新たに「Color」というアプリ/サービスを立ち上げ、ベンチャーキャピタルから4,100万ドル集めたことで注目されています。ソーシャル系のアプリやサービスはなんでもそうですが、利用者数がキャズムを超えられるかどうかが成功・失敗の分かれ道です。そのために、いかに利用者を惹きつけることが出来るかが重要なのですが、Colorはどうでしょうか?

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愛はお金じゃ買えない:うまくいくアプリといかないアプリ
By オム・マリク 2011年3月25日 5:00am PT / GigaOM

ニューヨークからサンフランシスコに帰るフライトの揺れる機内で、最新アプリのColorに関する大騒ぎの全てに、やっと目を通すことができた。Colorチームは、一流ベンチャーファームのセコイアキャピタルや、その他著名投資家グループから集めた(広報とマーケティング担当副社長のジョン・クーチの手助けは言うに及ばず)膨大な額のキャッシュで、衆人の注目をあつめることになった。

しかし、こういう注目の集め方は正しくない。アプリにとって必要なのはユーザーからの注目だけだと思うからだ。ジェイソン・キンケイドの記事を見てから、このロケーションとソーシャルを意識した写真共有アプリをダウンロードしたが、私にはこのアプリがサハラ砂漠の尽きることない砂のごとく不毛なものに感じた。そのうちサービスの利用者が増えてくればそれも変わるだろうと言う人もいるが。

この騒ぎのなかで見落とされているのは、ウェブとモバイルのエコシステム全体を包み込む、より大きな問題だ。Colorアプリは、今日の多くのモバイルアプリと同様、ある問題に直面している。それは、どんどん選択肢が増えて混雑してきた世界で、いかにしてユーザーの注目を集めることができるか、というものだ。実際、この議論はすべての消費者向けサービス(新らしい家庭用製品、デバイス、新旧のメディアなど)に敷衍することが可能だ。

こういうサービスは、ゆらめき瞬きそして常に変化し続けるタイムズスクウェア周囲のビルの壁面広告のようなもので、そのいずれも焦点を合わせ続けるのは不可能に近い。大きいのもあれば明るいのもあるが、大概は完全に忘れられるのが落ちだ。

多くの起業家はやその支援者たちは、この「注目」に対する認識が不十分だ。もしも新しいスタートアップ企業が、我々のこのフェイスブックとツイッターに支配され、CitiVilleで遊び、レディー・ガガを聴き、レベッカ・ブラックのビデオを共有する一日から時間を切り取れるとしたら、それこそ真に注目すべきスタートアップなのだ。

Instagr.amは、我々の多忙な生活の中になんとか入り込む隙間を見つけたアプリの一つだ。現在数百万のユーザーを抱えており、テクノロジー通と呼べるような人はそのうち数千人に過ぎない。同様に、Beluga(フェイスブックにより買収された)、SpotifyEvernoteInstapaperなども、ユーザーの注目を集め(故に利用され)ることに成功した。

我々が日々ウェブやモバイルに費やしている時間を置き換えなければならないか?それは分からない。分かっていることといえば、私がPicPlzに1ヶ月近くアクセスしていないということだ。このサービスは繰り返しメール通知を送りつけてくるのだが。私はSkypeと比べて、Nimbuzzにより注目している。なぜなら、このサービスを使えばGoogle Talk経由で同僚宛にインスタントメッセージを送信できるからだ。結果として、長距離電話を掛ける場合、SkypeよりもNimbuzzのコールアウトサービスをより頻繁に利用している。

こういう例をいくつも見てみると、なぜ私がこういうサービスに注目するのか、二つのはっきりとした理由が見えてくる:

  • シアワセ(言い換えれば、充実)
  • 効用(言い換えれば、問題解決)

私は今、これらの課題に関する本を2冊読んでいる。通常読むのとは異なる種類のビジネス書だ。というのは、普段読むのは何かを系統だてて学ぶような本なので。にもかかわらず、ここで紹介する本の作者たちはふたりとも極めて素晴らしい人たちなので読む価値があると思う。

元アップルのエバンジェリストで、現在はフリーのエバンジェリストであるガイ・カワサキの新刊が「Enchantment(魔法)」。あれやこれやの売り文句を取り除けば、カワサキの言っているのは要するに、顧客を喜ばせさえすれば注目という見返りを得ることができ、ひいてはお金を得ることができるということだ。

ガイはこのことをアップルで学んだ。我々の殆どはアップルをハードウェア製造の会社だと考えているがそうではない。起亜やダッジみたいなのをハードウェアの会社というのだ。アップルはシアワセをビジネスにしている会社なのだ。それこそが、アップル製品にから受ける最初にして最大の感情だ。ビジネスのその他の部分は、あなたのクレジットカードをアップルストアの気障ったらしい店員に手渡させるための形式的なものに過ぎない。

このことはボーズ社のオーディオシステムにも言える。いちオーディオマニアとして、ボーズのスピーカーだなんて考えただけで寒気がする。私の義理の兄弟にとっては、至福のオーディオを手に入れるシンプルな手段だ。ボーズにとって幸運なことに、世界は私の義理の兄弟のような人々で満ちている。

Instagr.amがうまくいっている理由の一つは、このサービスにはその「シアワセ」があるからだ。友人の男の赤ん坊を見る、すると楽しい気分になる。マシュー・イングラムがアイスホッケーのゲームを見に行った写真を見る、すると、家族との時間を楽しんでいる彼を見て心が暖かくなる。私はInstagr.amに注目の見返りを与える。それは、Instagr.amが私をシアワセにしてくれるからだ。それがこのアプリの効用だ。

これがまさに、ゲイリー・ベイナーチャックが「The Thank You Economy(感謝の経済)」の中でテーマにしている心理だ。著者は同書の中で、顧客に対して最大の価値を提供する企業こそが勝利するとしている。古風な考え方で、初期の慈善市ぐらい古くて、脱工業化時代の過剰に商業化された時代の中でいつの間にか失われてしまったらしい。

マルコ・アーメントのInstapaperを使うとき、ほとんど毎回私は彼に心ひそかに感謝している。なぜか?それは、彼が私の問題を解決し、人生を管理しやすくしてくれたからだ。結果として、私は喜んで有償版にアップグレードした。そして、Instapaperで記事を保存したり読んだりしていないときには、私はすべての人にこう言っている:使ってみなさい、と。これがまさに「Thank you economy」というものだ。心理的もしくは実用的なつながりを感じる製品だからこそ宣伝をするというわけだ。

素晴らしいタブレットがどんどん市場に出てきている。どれも機能満載で強力かつ技術上の魅力に溢れている。しかしながら、どれもみな苦しい戦いを強いられるだろう。というのは、メーカーはどこも、望遠鏡を逆さに覗き込んでいるのだから。友人のピップ・コバーンがメールをくれた。iPadは、そのユーザーこそが製品の究極のコマーシャルなのだと。利用者が増えれば増えるほど、欲しがる人もまた増える。「人が信じるのは、売上を上げるための事業計画書を持ち歩いたり人を操作したりしないような人たちだ。」ピップはそう書いている。ピンポン!

私の言うことが信じられないって?それなら、日々の日課をシアワセと効用の二つのバケツに振り分けてみよう。きっと、これらの二つのことこそが、成功するアプリ、サービス、製品やメディアを支える推進力になっていることに気づくはずだ。

PathPicPlzそしてColorのようなサービスを、私は嫌いなのではない。実はもっと悪くて、関心がないのだ。なぜか?それは、これらのアプリには、常に触れていたいと思わせるような共感を呼ぶものが欠けているのだ。共感は、評価額が1億ドルあっても、銀行に4,100万ドルあっても買うことができない。そして、履歴書や経営陣では、人のシアワセを保証することはできないのだ。

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ソース:GigaOM - Money Can’t Buy You Love: Why Some Apps Work, Some Don’t By Om Malik Mar. 25, 2011, 5:00am PT (http://gigaom.com/2011/03/25/money-can%E2%80%99t-buy-you-love-why-some-apps-work-some-dont/)